1月20日、AWSジャパンは2020年最初の記者発表会を開催し、大阪ローカルリージョンを2021年初頭にフルリージョン化することを明らかにしました。この会見の詳細について執筆した記事を「クラウドwatch」に掲載いただいております。
会見のゲストにはソニー銀行 執行役員 福嶋達也氏が登壇し、ソニー銀行におけるこれまでのAWSクラウド活用の流れ、そして大阪リージョンの正式ローンチに対する強い期待を語っていました。ソニー銀行は2013年からAWSを利用しており、国内金融機関としてはかなり初期から積極的にクラウド展開を進めてきた企業のひとつですが、今回の大阪リージョンのローンチ発表に伴い、全業務でのAWS移行を検討する方針を示しています。勘定系システムについても、すでに2019年冬から勘定系の一部である財務会計システム(総勘定元帳)を本番稼働中で、バックアップサイトとして大阪ローカルリージョンを利用していることから、本格的なマルチリージョン運用に関しても「問題ないと思っている」(福嶋氏)と自信を見せていました。
「金融ITの歴史とは不正と規制との戦いの歴史」 – ある外資系IT企業のエグゼクティブからこんな言葉を聞いたことがあります。とくに日本は銀行に対する規制が非常に厳しく、また、SIerなどベンダ主導のオンプレミス開発がメインだったこともあり、内部からも外部からもなかなかクラウド化が進みませんでした。その一方で、ソニー銀行や三菱UFJ銀行などは2010年代初頭から社内業務システムのIaaS化やSalesforce.comといったSaaSの利用といった地道な取り組みからスタートし、少しずつクラウド導入による成果を積み重ねてきました。また、国内大手SIerの中からも金融でのクラウド普及を進める動きが東京リージョン開設の2011年ごろから起こっており、2012年9月には3社のSIer(電通国際情報サービス、野村総合研究所、SCSK)による最初の「金融機関向け『Amazon Web Services』対応セキュリティリファレンス」が出されています。筆者はこのとき、この3社によるセッションを最初(2012年)の「AWS Summit Tokyo」で聞いたのですが、その内容に衝撃を受け、以下のような記事を書かせていただきました。
東京ローカルリージョンは2011年3月2日にローンチしました。以後、アジア太平洋地域における最初のAWSリージョンとして、そして国内のクラド活用の拠点として、急速な成長を続けてきたのは周知の通りで、まもなく10年目の運用に入ります。そして東京リージョンの補完的な存在、おもにバックアップやディザスタリカバリを担当するサイトとして、金融業界を中心とするエンタープライズの強い要望から大阪ローカルリージョンが誕生したのは2018年2月のことでした。ソニー銀行もAWSに対して大阪リージョンの開設を申し入れてきた企業の代表ですが、今回の大阪フルリージョン化の決定により、次期更改予定の勘定系システムをコンテナ化やマイクロサービスを前提にしたクラウドネイティブアーキテクチャ、それもマルチリージョン構成で構築する計画が進んでいるそうです。AWSジャパンの長崎忠雄社長は「クラウドの使われ方は10年前とは大きく異なってきている」と会見で語っていましたが、まさにそのとおり、10年前には誰も予想もしていなかった”銀行の勘定系システムをクラウドネイティブで運用する”という事例が、そう遠くない未来に現実化しようとしています。AWSはもちろんのこと、ソニー銀行やその関係者のように地道な普及活動を続けてきた人々が、こうしたドラスティックな変化を支えていることを実感します。
※アイキャッチ画像は1/20の会見で撮影したソニー銀行の福嶋氏(左)とAWSジャパン 代表取締役社長の長崎氏。長崎社長が記者発表会に登壇するのは久しぶりでしたが、「2020年最初の発表会の場で。福島さんとともに良いニュースがアナウンスできてよかった」とコメントしていました。
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