ヒトが少なくなる時代のモノづくりに向けて – 竹中工務店、AWSと提携した「建設ロボットプラットフォーム」を展開へ

竹中工務店は2月14日、施工中の建物内で建設ロボットが自律走行するための経路/範囲シミュレーションや遠隔操作/監視を可能にする基盤システム「建設ロボットプラットフォーム」を発表しました。プラットフォームのコアにはAWSのマネージドサービス「AWS RoboMaker」を採用し、実機のロボットとBIM(Building Information Model)データを連携、これにより建設現場でのロボットの自律走行の範囲が大幅に拡大し、作業効率の向上が期待されます。

建設業界では2018年ごろから大手ゼネコンを中心に、総合的な3次元モデリングシステムのBIMの普及が進んでいます。従来のCADは2次元の図面から3次元のモデルを設計していましたが、BIMは最初から3次元でモデルを設計し、1つのモデルを構成するすべての図面データが連動するしくみとなっています。また図面データだけでなく、建材パーツのサイズや素材、工程、コストなどのデータも属性として追加することができるため、設計の早い段階からより具体的な完成イメージを共有できます。

このBIMデータを地図情報として、建設現場で稼働するさまざまなロボットにクラウド経由でデプロイし、ロボットの移動/範囲を設定、遠隔指示による自律走行を実現するのが今回の建設ロボットプラットフォームです。建設現場では清掃、建設資材の自動搬送、日常の品質管理記録など、ロボットが稼働する分野が増えてはいるものの、ロボットそのものには地図情報が埋め込まれていないため、これまではカラーコーンに反射テープを貼ったり、床にQRコードを埋め込むなど、走行範囲の事前ティーチングが必要でした。本プラットフォームではBIMベースで移動および動作範囲を設定できるので、カラーコーンやQRコードがなくても、ロボットが動き回れる範囲が大きく拡がります。また、RoboMakerを通して、ロボットのバッテリー状態のチェックや異常検知、さらには他のAWSサービスと組み合わせた先進的なアプリケーション開発なども可能になります。

 

竹中工務店の「建設ロボットプラットフォーム」のコア部分にはAWS RoboMakerが採用されており、BIMデータとロボットを連携、リアルタイムな制御や、走行範囲の柔軟な設定を可能にしている

AWS RoboMakerはオープンソースのROSをベースにつくられたマネージドサービスですが、実機を使うことなく、クラウド上で何度もロボティクスアプリケーションをシミュレーションできるシステムとして、2018年の発表以来、グローバルで非常に多くの顧客を獲得しています。竹中工務店もRoboMakerのメリットのひとつとして、刻々と変化する現場の環境に応じたシミュレーションが何度も可能である点を挙げていました。

竹中工務店はこのロボットプラットフォームを自社だけに限定するのではなく、建設現場で働く人々が少なくなる時代に建物を効率的に作っていくためのシステムとして提供していく姿勢を見せています。「少子高齢化で現場で働ける人が少なくなり、さらに働き方改革の実施で建設現場でも週休2日制が推奨される現在、より効率的に建物を作っていこうとするとき、ロボットをより活用し、さらにBIMをベースに現場のプロセスをつないでいこうとするのは自然な流れ」と竹中工務店 生産本部生産企画部 部長 松尾亨氏はコメントしていましたが、そういう意味でも今回の発表は、竹中工務店だけでなく日本の建設業界全体が取り組むべき課題である”現場の生産性の向上”へのひとつの回答といえるでしょう。

ゼネコンは旧弊でアナログなイメージが強い業界ですが、今回の竹中工務店の取り組みは、AWS RoboMakerという数あるAWSのマネージドサービスの中でもロボティクスに特化したユニークな、しかし標準化しやすいシステムをコアに据えたこと、そしてAWSや開発パートナーのブレインズテクノロジーなど外部の知見を取り入れ、業界全体を巻き込んだサステナブルでオープンなプラットフォームを構築しようとしている点が高く評価できます。本プラットフォームは6月まで試適用を繰り返し、2020年度中には現場での本格適用を図っていくそうです。日本の”現場”を変えていく先進的な事例のひとつとして、今後のアップデートも注目されます。

※アイキャッチ画像は竹中工務店が発表した建設ロボットプラットフォームの概要です。RoboMaker経由でBIMデータをデプロイされたロボットたちが建設現場でよりひろく活躍する日がすぐそこまでやってきています。

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