SAPジャパン福田社長が3月末で退任、国内事業会社のCIO兼DX担当役員にキャリアチェンジ

SAPジャパンは1月6日、同社代表取締役社長 福田譲氏が2019年3月31日付で同職を退任することを発表しました。後任には同社 常務執行役員 インダストリー事業統括 鈴木洋史氏が4月1日付で代表取締役社長に就任します。

福田氏は2014年9月にSAPジャパンの代表取締役社長に就任、当時39歳だった福田氏の社長抜擢はその年齢もさることながら、新卒入社の生え抜き人材が社長になるというSAPジャパンにとっても初の人事に、業界もメディアも大きく驚いたことを覚えています。福田氏を日本法人の社長に強く推薦したのはかつてのSAPジャパンの社長で、福田氏の上司でもあったロバート・エンスリン(Robert Enslin)氏。同氏は2014年当時はSAPグローバルのエグゼクティブボードメンバーを務めており、日本市場における「SAP HANA」への移行を推進するためにも、福田氏をトップに据えることが最良の選択と主張していました。なお、エンスリン氏は現在、Google Cloudでグローバルカスタマーオペレーション担当のプレジデントを務めています。

SAPは2012年ごろからERPベンダからクラウドカンパニーへと転換を図っており、グローバルの戦略を日本市場でも推進していくためには、国内の顧客と良好な関係を保ちつつも、大胆なイノベーションを顧客に提示できるリーダーシップが求められていました。20代から営業部長に任じられるなど、順調にキャリアの階段を上ってきた福田氏は、日本企業の可能性を信じながらも、グローバルの変革のスピードから遅れがちな日本企業をテクノロジの力でサポートしていきたいという思いを、社長就任前からひときわ強くもっていた印象があります。この5年、SAPのメインポートフォリオは「SAP S/4HANA」「SAP Leonardo」「SAP Cloud Platform」と大きく変わってきましたが、それはSAP ERPを使ってきた国内ユーザに対して変化を迫ることを意味していました。新しいテクノロジをキャッチアップすることがなぜ重要なのか、なぜデジタルトランスフォーメーションが必要なのか – 外資系ITベンダのトップとして、福田氏は自身の言葉でもって粘り強く、日本の顧客にテクノロジによる変革の重要性を5年にわたって訴え続けてきたように思います。また、製品だけでなく、デザイン思考の啓蒙やコミュニティマーケティングの確立、SMBを含むパートナー戦略の推進など、SAPジャパン自身の組織変革も福田氏はリーダーとして率先して取り組んできました。SAPアジアパシフィックジャパンのプレジデントであるスコット・ラッセル氏は福田氏に対し「福田さんはSAPジャパンの発展と成功に重要な役割を果たしました。彼の貢献と功績に心より感謝いたします」とコメントしていますが、まさにグローバル/国内ともに大きな変革期にあったSAPを日本法人のトップとして支え続けた5年間だったのではないでしょうか。

4月1日からは国内事業会社のCIO兼デジタル変革(DX)推進担当役員として入社する予定という福田氏。詳細はまだ明らかになっていませんが、今度はベンダの立場ではなく、事業会社の中のひととして、日本のデジタルトランスフォーメーションを引き続き牽引していってほしいと願っています。

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