Amazonのジェフ・ベゾス(CEO)は2月2日(米国時間)、2021年第3四半期をもってAmazonのCEO職を辞してチェアマンに退き、後任のCEOにはAWSのCEOを務めるアンディ・ジャシー(Andy Jassy)が就くことをAmazonの従業員に向けたメールにて発表しました。
ベゾスはCEO退任後もAmazonのチェアマン/ボードメンバーとして大きな影響力をもちますが、今後は自身がかかわる宇宙事業やメディア事業などにより注力していくことを明らかにしています。
新たにCEOに就任するアンディ・ジャシーは1997年にAmazonにジョイン、2003年にはわずか57人のチーム「Amazon Web Services(AWS)」を社内に立ち上げ、ファウンダーとしてプロジェクトを指揮してきました。2006年12月に最初の一般向けオファリングとなるストレージサービス「Amazon S3」の提供をスタート、パブリッククラウド事業者としての一歩を踏み出し、その後は周知のとおり、クラウドサービスベンダのパイオニアとして、そして最大のイノベータとして現在も事業を拡大中です。ベゾスのCEO退任メールと同日に発表されたAmazonの決算によれば、AWSの2020年第4四半期の売上高は127億4200万ドル(約1兆3384億円)、前年同期の99億5000万ドルから大きく数字を伸ばしており、Amazonグループの総売上高(1225億5500万ドル)の約10%、営業利益(35億6400万ドル)に至ってはAmazonグループ全体(68億7300万ドル/約13兆円)の半分以上を占めています。最初は小さないちプロジェクトに過ぎなかったクラウドサービスを、Amazonの屋台骨を支える巨大事業へと成長させたアンディについて、「彼は傑出したリーダーになるだろう。私は彼に全幅の信頼を置いている(He will be an outstanding leader, and he has my full confidence.)」とベゾスが高く評価するのもうなずけます。
ベゾスの退任メールでは、Amazonの成功の根幹には「Invention(発明)」があると強調されています。Inventionの実現に向かってクレイジーに取り組み、やがてそれが人々にとってあたりまえの存在、あくびが出るほど退屈なものになるまでやり続ける – そのInventionの姿勢がAmazon.comのレビューやワンクリックサービス、レコメンデーションを生み出し、さらにはKindle、Alexaへと続いていきました。パブリッククラウドも同様で、登場初期の2010年代前半までは「業務にはとても耐えられない、おもちゃのようなシステム」とさんざんに言われていましたが、現在は各国の政府や巨大金融機関でさえ、基幹業務をパブリッククラウド上に移行する時代になっています。ベゾスのいうInventionの重要性を深く理解し、クラウドが世界中のITシステムをreInventするプラットフォームになることを強く信じていたアンディ・ジャシーだからこそ、AWSの驚異的な成長を導くことができたのだとあらためて思います。
アンディ自身はまだコメントを出していませんが、Microsoftのサティア・ナデラCEOやSalesforce.comのマーク・ベニオフCEOなど、クラウドベンダのトップがアンディのAmazon CEO就任決定に祝福のメッセージを贈っています。クラウドで世界をreInventしてきたアンディが、Amazonという巨大グループ企業をどうreInventしていくのか、大きな期待がかかります。
トップ画像は2019年11月に米ラスベガスで開催されたAWSのグローバル年次カンファレンス「AWS re:Invent 2019」のオープニングキーノートに登壇したアンディ・ジャシーです。2020年のre:Inventはオンラインでの開催となりましたが、re:Inventのキーノートではアンディは毎年必ず「re:Inventはテクノロジカンファレンスではない。エデュケーショナルカンファレンスである」というフレーズからプレゼンを始めていました。同じメッセージを何度も繰り返して伝えていくというアプローチはInventionの成功と浸透に欠かせないアプローチなのかもしれません。
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