10月のニュースですが、2019年春に予定されているServiceNowの国内データセンター開設についての記事をクラウドwatchに掲載いただきました。東京/大阪ともに、データセンターのオペレーションはNTTコミュニケーションズが担当します。
ServiceNowにとって日本は重点市場のひとつであり、ここ1、2年の日本法人の成長は本社の期待を大きく上回るものとなっています。日本法人にとっても日本のユーザにとっても待望だった国内データセンターのパートナーにNTTコミュニケーションズを選んだ理由として、ServiceNowのDevOps担当シニアバイスプレジデントのパット・ケーシー(Pat Casey)は次のように語っていました。
NTT Comをパートナーに選んだのは、同社のエンタープライズビジネスにおける実績や知名度に加え、ServiceNowのサービスを顧客に提供するために必要な技術力を高く評価したから。データセンターのフットプリントはその地域によって異なるが、日本はわれわれにとってもっとも重要な市場のひとつであるため、テクニカルファクトを慎重に検討した結果、NTT Comが最適だと判断した。
–Pat Casey, Senior Vice President, DevOps & Global Head of Engineering, ServiceNow
このようにNTTコミュニケーションズの”技術力”は同社から高い評価を得ているわけですが、実際、会見で紹介されたNTTコミュニケーションズのServiceNow事例は戦略的パートナーとして選ばれるのも十分納得できるほどに、ServiceNowを使い倒している感じが強く伝わってきました。
🐾パートナー社員入社手続きの自動化
NTTコミュニケーションズには数千名のパートナー社員が在籍するそうですが、それらの人々が入社する際、従業員登録や必要なリソース(PC、入退室のカードなど)の調達に関して、複数のシステムで別々に進めたり、メールベースで担当者どうしがやりとりすることが一般的でした。こうした人力&手動のプロセスでは当然、タスクの遅延や漏れが生じ、間接稼働が増えてしまい、結果としてパートナー社員の入社日になっても間に合わず、彼らが業務を始められないという事態が頻発していました。しかしServiceNowの導入により、複数のシステムが自動的に設定され、人力ベースのプロセスに付きものの間接稼働がなくなり、リソースの入社時配布が実現しているとのこと。稼働時間にして年間2万4000時間以上の改善が図られています(ところで”パートナー社員”ってふつうの社員と違うんでしょうか?)。
🐾クラウドサービス保守システムにおける故障復旧自動化
システムの故障を検知し、復旧するまでのプロセスも自動化することで大きな改善が実現できます。NTTコミュニケーションズでは同社が提供するクラウドサービスの保守システムを一部自動化していたものの、手動オペレーションと組み合わせるかたちで運用していました。しかし、故障検知から復旧通知までの間には膨大なオペレーションプロセス – たとえば故障箇所の切り分けや故障に対するアクションの決定、復旧手順の作成、復旧への対処などがあり、さらにひとつひとつのプロセスにベテラン作業員のノウハウが必要とされていました。プロセスに手動オペレーションが混ざれば必ずそこがボトルネックとなり、状況把握にも支障が生じます。そこで同社ではServiceNowオーケストレーションを導入し、顧客データベースや設備データベースと故障復旧のタスクを紐づけることでワークフローの標準化とプロセス全体の自動化を実現、さらにAIを活用した故障箇所の事前予測など組み合わせることで、これまで15分かかっていたプロセスが1分に短縮しています。
このようにNTTコミュニケーションズでは社内でのServiceNow活用を積み重ね、顧客へのソリューション提供にもServiceNowを活用し始めています。
- ServiceNowを活用した保守/運用をマネージドサービスとして提供する「運用アウトソース」(すでに開始済み)
- ServiceNowにNTTコミュニケーションズのナレッジを組み込んだ保守運用プラットフォームを提供する「ServiceNow ITSM Solution」(2019年度に提供開始予定)
また、同社のグローバルオペレーションにおいてもServiceNowの活用が進んでいるようです。
- ServiceNowにNTTコミュニケーションズの自動翻訳ソリューション「COTOHA Translator」を連携させ、異言語オペレータを介して東京、バルセロナ、ムンバイを結んだ24時間365日オペレーションを実現した「Follow the Sun Operation」
- ヘルプデスクへの問い合わせで0他を蓄積→可視化→分析し、得られたインサイトからシステム/業務プロセスの問題発見やサービス改善への提言を多言語で行う「Insight from Helpdesk」
NTTコミュニケーションズを含めたNTTグループは現在、急速にグローバルカンパニーへの転換を進めています。そしてグローバルカンパニーとして世界で認められるためには、オペレーションから文化に至るまで、あらゆる面で世界標準に準拠していることが必要です。逆に言えば、標準化が進んでいない、世界のスタンダードを重視しない企業は、いくら海外に拠点を置き、海外の人材を採用したとしても、グローバルカンパニーにはなりえません。もちろん、ツールを使えばグローバルカンパニーになるというわけではありませんが、標準化を進めるツールを使うことでグローバル化への最初の一歩を踏み出すことはできます(ERPなどはその典型です)。そういう意味で、NTTコミュニケーションズがServiceNowによる自動化/標準化を進め、技術ノウハウをためるだけでなく、グローバルカンパニーとしてデータセンターパートナーの地位を獲得したことは、標準化への取り組みが遅れている多くの日本企業にとって良いお手本となるように思います。同社は今後、日本だけでなく、ServiceNowの他のリージョンのデータセンター契約獲得にも意欲を示しており、さらにグローバル化への取り組みが加速することになりそうです。
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