Treasure DataがSVF2のメンバー企業に、太田一樹CEOの下で”第3フェーズ”へ

Treasure Dataは7月13日(英国時間)、6月25日付けでかつての親会社である英Armから完全に独立し、新たにソフトバンク・ビジョン・ファンド2(Softbank Vision Fund 2: ソフトバンクグループが運営するファンド事業のひとつ)のメンバー企業として、新経営体制でスタートすることをアナウンスしました。新CEOにはTreasure Data共同創業者のひとりである大田一樹氏(前CTO)が6月1日付けで就任しており、会長には同じく共同創業者の芳川裕誠氏が、CFO(最高財務責任者)およびCOO(最高執行責任者)には2014年から2018年にかけて同社のCFOを務めてきたダン・ワイリック(Dan Weirich)氏がそれぞれ就任します。新体制発足というより、Treasure Dataの黄金期を作り上げた3人のエグゼクティブが現場復帰を果たしたという表現のほうが適当かもしれません。

2011年に米国シリコンバレーで芳川氏、太田氏、そしてFluentd開発者の古橋貞之氏の3人によって創業されたTreasure Dataは、パブリッククラウド(AWS)上でHadoopやNoSQLを駆使し、ビッグデータの収集から格納、さらにレポーティングまでを一貫して提供するクラウドネイティブなデータマネジメントビジネスで成長を続けてきました。2016年春、当時のメインプロダクトであったデータマネジメントプラットフォーム「Treasure DMP」が資生堂に採用されたことをきっかけに、CDP(Customer Data Platform)のパイオニア的存在として注目される機会が増え、デジタルマーケティング分野を中心に急速にビジネスを拡大させていきます。2018年、当時ソフトバンクグループの傘下にあった英ArmがTreasure Dataの買収を発表、Armのデータビジネスユニット「Arm Treasure Data」として新しいスタートを切りましたが、その2年後の2020年9月に今度はArmがGPUメーカーのNVIDIAに買収されることになり、Treasure Dataの事業はArmから切り離されることになりました。このとき、芳川氏と太田氏は取締役としてTreasure Dataに籍は残すものの、経営の現場からは離れることを発表、最近では国内外のスタートアップを支援するなど投資家としての活動が目立っていたところでした。

米国での創業、グローバルカンパニーによる買収、そしてソフトバンクグループ企業としての再スタート – 太田氏はこれを「Treasure Dataの第3フェーズ」と呼んでいますが、これまでCTO(Arm時代はテクノロジ部門担当バイスプレジデント)として技術者チームと経営サイド、そして顧客をつなぐ橋渡し的な役割を果たしてきた太田氏が、新しいフェーズに入ったTreasure Dataの顔として復帰した太田氏が芳川氏とともにどうリーダーシップを発揮していくのか、その手腕にあらためて期待がかかります。

「(パブリッククラウド上で)複数のHadoopクラスタをもつこと、ユーザ企業にそれをシェアしてもらうことに何のためらいもない」 – 2012年のHadoopカンファレンスの基調講演で太田氏が自信をもってこう断言していた様子を筆者はいまも鮮明に覚えています。当時はまだ、クラウドのセキュリティモデルへの理解も現在ほどではなく、またデータ処理のための大規模クラスタを構築する事例も決して多くはありませんでした。それから10年近くが経った現在、クラウドやデータ分散処理技術をめぐるトレンドも、Treasure Dataも大きく変わりましたが、あのとき太田氏が見せた自信を裏付ける技術力と時代のニーズを的確に捉える選択眼がそのままなら、そしてこの10年のさまざまな経験を経営の糧にできるのなら、第3フェーズに入ったTreasure Dataがふたたび力強い成長モードに乗る可能性はきっと高いのでは、と筆者は思っています。

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