世界中のメディア業界で数々の導入事例をもつスケールアウト型NASストレージ「Dell EMC Isilon」の国内導入事例として、東映アニメーション デジタル映像部のユースケースがDell Technologiesより公開、1月31日には報道陣向けに東映アニメーションの担当者である山下浩輔氏によるプレゼンテーションが行われました。そのプレゼン内容をもとにしたレポートを「gihyo.jp」に掲載いただいております。
IT管理者の苦労を軽い自虐をまじえながら淡々と語る山下氏でしたが、アニメーション業界に限らず、日本のありとあらゆる業種業界で現在進行中の”アナログからデジタルへの転換”に組織としてキャッチアップしていくことがいかに難しいか、あらためて痛感させられるものがありました。
このほかにも山下氏はアニメーション業界におけるデジタル化への課題について、以下のような項目を挙げていました。
- 億単位のファイルのハンドリング … 通常のアニメーション製作ではいままで紙から画像をスキャンしてデータ化していたが、デジタル製作が進めば最初からデータ化された状態になる(ネイティブデジタルフォーマット化)。3DCGと変わらないワークフローに転換するとファイル数やファイルサイズがいまよりももっと増えることは明らか。数億ものファイルを手動で整理したり検索したりすることは無理
- 億単位のファイルのバックアップ … 2020年現在のデジタル映像部のデータ量はすでに1ペタバイト。今後増え続ける一方のデータをどうやってバックアップすべきか。続編製作や4K/8K/HDR化などのリマスタリングでは、作業途中のデータがあったほうが間違いなく便利。だがどうやって目当てのデータを膨大なバックアップから探し出せるようにするのか→AIの活用も視野に入れる
- クラウドとの同期 … プロジェクトデータをまるごとクラウドにアーカイブ、もしくは製作中からクラウドに同期したほうが使いやすそうだし、ディザスタリカバリの観点からも興味深いが、セキュリティやコストが不安。「明日、どうしても納品しないといけない」という切羽詰まった現場の要請が多いときはクラウドでレンダリングも考えられるが、パフォーマンス的にまだ問題が多い→5Gにやや期待している
- 作業用PC/WSの高速化 … 10G搭載のPCやワークステーションが出始めているが、10Gを入れてもスイッチなどをアップグレードしないと結局トラフィックが上がって混雑するだけで効果がない。最終的にファイルサーバ側のストレージ(Isilon)も40Gくらいにしないとバランスが取れない
どれも現場からの切実な声が響き渡るような内容ですが、山下氏が最後に「根本的な悩み」として挙げたのはテクノロジではなくヒトにまつわることでした。
「いままで紙でやってきた世代の人たちに,デジタルの文化をどう伝えていくか,非常に悩ましい。PCすら触ったことがない人には”Windowsをアップデートしてください”すら言いにくい」
「いろいろ課題は山積しているが,システム管理者の人材が少ないのが最大の悩み。ずっと求人を出しているが,管理者2名でユーザサポートからレンダリングサーバの管理,ストレージのアップデートまで担当するのはかなりきつい」
テクノロジによる変化を妨げる最大の障壁がヒトに起因するのはどの組織にも共通のようです。この障壁をどう取り除いていくのか、もっといえばヒトをどう変えていくのか – 日本企業のデジタル化の成否はこの一点にかかっているといえそうです。
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