バックエンドのコアにGKE – クラウドへの段階的移行にGCPを選択した富士フイルムの導入事例

2018年はKubernetesが大きなモメンタムを迎えた1年であり、大企業の本番環境でも多くのKubernetesシステムがローンチしました。とくにKubernetesの煩雑なオペレーションをベンダに任せる”マネージドKubernetes”への注目度は高く、その中でもAWSが提供する「Amazon EKS」と、Kubernetesを生んだGoogleによる「Google Kubernetes Engine(GKE)」はその技術力の高さと導入のしやすさから、グローバルで採用が進んでいます。

日本では、エンタープライズクラウドといえばAWSが圧倒的な強さを誇りますが、AI/マシンラーニングやKubernetesに関しては、Googleがその地力を示すケースも増えてきました。Google Japanが公開した富士フイルム/富士フイルムシステムによるGCPおよびGKE導入事例もそのひとつです。

この事例では、富士フイルムが顧客向けに提供するネットショップ「FUJIFILM Prints & Gifts」のバックエンド刷新にGCPが採用された経緯が紹介されています。このバックエンド(オーダー管理システム: OMS)は10年以上に渡ってオンプレミスで運用されていましたが、アーキテクチャの老朽化や内容を把握している技術者の減少により、メンテナンスの負荷が増大、オンプレミスからクラウドへと移行することになります。ここでのポイントは一気に移行を進めるのではなく、「機能が分散していたOMSを一元化し、今後5年、10年利用できる統合基盤を作ることが必要」と判断して、数年をかけた段階的な移行を決めたことです。これはエンタープライズで成功している大規模クラウド移行事例においてよく見られるアプローチで、AGCのSAP基盤移行事例などもこれにあたります。

もうひとつのポイントは「変化に強いバックエンドを作る」ことを理由にGKEの採用を決めている点です。富士フイルムのネットショップはイベントやキャンペーンの実施にあわせ、フロントエンドの変更が頻繁に発生します。したがってバックエンドもまた、フロントエンドの変更に柔軟かつ迅速に対応することが求められます。アプリケーション側の頻繁な変更への対応はコンテナ技術の得意とするところですが、富士フイルムがGKEを選んだ理由として、GoogleのKubernetesにおける技術的優位性、とくに当時はGKEだけが正式サービスだったことを挙げています。やはり最初にマネージドサービスとしてサポートしていた点は大きな決め手だったようです。GKEの採用に伴い、OMSにはマネージドサービスを含むGCPの各種サービスがパズルのピースを埋めるように採用されており、GKEというコア技術の選択がプロジェクトのすべてを決めたことがわかります。

この事例では単に富士フイルムにおけるバックエンドのひとつがクラウド移行のファーストステージをクリアしただけでなく、

  • 今後の開発プロジェクトにおけるGKE採用の検討
  • アプリケーション開発部門と運用部門のDevOps的な関係構築
  • Googleのサポートに対する信頼感
  • AI/マシンラーニングなどGCPの他の技術を使った新たなデジタルトランスフォーメーションへの期待

といった、新しい可能性を生んでいます。国内ではまだ少ない大企業によるマネージドKubernetesのユースケースというだけでなく、ひとつの導入事例が次の可能性を拡げるというクラウドの王道を行くサクセスストーリーであり、さらに、AWSにはまだエンタープライズサポートの面で遅れをとるGoogle Cloudが、GKEで先進的な国内事例を作ったインパクトも非常に大きく、そうした意味で評価すべきポイントの多い事例だといえるでしょう。

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