富士通、AIビジネスのヘッドクオーター「FUJITSU Intelligence Technology」をカナダに設立

富士通は11月6日、同社のAIビジネスに関するグローバル展開の戦略決定およびその実行を担当する新企業として、カナダ・バンクーバーに「FUJITSU Intelligence Technology」を11/1付けで設立したことを発表しました。CEOには富士通 執行役員常務 AIサービス担当の吉澤尚子氏が就任します。

FUJITSU Intelligence Technologyは富士通が100%出資する子会社ですが、単なるグループ企業ではなく、富士通が展開する5つのグローバルリージョン(日本、アメリカ、EMEA、アジア、オセアニア)のAI事業を統括する役割をもちます。つまり、AI事業に関しては日本のヘッドクオーターも(理論上は)FUJITSU Intelligence Technologyの下の1リージョンという位置付けになります。「富士通の製品/サービスは日本でつくったものを各リージョンで展開していくというスタイルが一般的だが、AIの場合、それではグローバルで通用しない。AIビジネスの最先端である北米に位置し、さらにシリコンバレーよりもコストが大幅に安いバンクーバーに拠点を置くことで、グローバルで戦えるAIビジネスを展開していく」と吉澤氏。今後5年間で累計4000億円の規模に成長させることを当面の目標に掲げています。ここでFUJITSU Intelligence Technologyおよび吉澤CEOが、実際に予算や人材、フォーカスする研究分野などに関してどこまで実際にグローバルで権限を発揮できるのか、日本の経営陣との権限のバランスはどうなるのか、そうした点にも今後は注目が集まることになりそうです。

新会社の設立と同時に、富士通のAI事業を今後支えていくとされる技術「デジタルアニーラ」の第2世代が発表されました(トップ画像、右は吉澤CEO)。デジタルアニーラは

量子現象に着想を得たデジタル回路で「組み合わせ最適化問題」を高速に解く新アーキテクチャ

であり、まだ研究段階にある量子コンピュータよりも容易に実問題に適用することができる技術とされています。すでに創薬や医療、交通の渋滞回避などさまざまな分野で実用段階に入っていますが、今年12月にクラウド版の提供が予定されている第2世代は最大規模8192ビット、最大精度64ビット(1845京階調)で第1世代の約100倍の性能を誇ります。このデジタルアニーラのような富士通ならではのAI技術を、グローバルの全リージョンのビジネスに紐づけ、新たな市場を作り出していくこともFUJITSU Intelligence Technologyの重要な役割となりそうです。

 

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